ラクだな

棚卸を効率化する方法|現場を止めずに数を合わせる

(更新:2026/09/25)#棚卸

「棚卸が一日仕事になっている」「出荷を止められないので、深夜や早朝にしか数えられない」。棚卸のご相談でいちばん多いのが、この2つです。

棚卸を効率化しようとすると、数える速さに目が行きがちです。ただ、実際に時間を食っているのは、数える前の準備と、数えたあとの集計です。ここを見直すと、数える作業はそのままでも全体が短くなり、現場を止める時間も縮みます。

この記事では、棚卸の作業を準備・現場・集計の3つに分けて、それぞれで効く方法をまとめます。紙とエクセルのままでも今日から使える方法と、道具を入れるときの選び方の両方を載せています。

この記事でわかること

  • 棚卸の時間が、準備・現場・集計のどこに消えているのか
  • 準備・現場・集計それぞれで効く効率化の方法
  • 入出庫を止める時間を短くする、締めの決め方
  • エクセル・バーコード・RFID・棚卸アプリの向き不向き
  • 効率化できたかどうかの確かめ方

棚卸の効率化は「準備・現場・集計」の3工程で考える

棚卸は、在庫の数量と金額を確定させる作業です。何のためにやるのか、どんな種類があるのかは棚卸とはでまとめているので、ここでは時間の使われ方に絞ります。

棚卸を3つの工程に分けると、どこに時間が消えているかが見えます。

工程やっていることよくある時間の使われ方
準備保管場所の整理、棚卸リストの作成・印刷・配布、担当とスケジュールの決定前日までに数時間
現場現物を数える、リストや用紙に書き取る2人1組 × 拠点ごとに数時間
集計手書きメモをエクセルに転記、商品の特定、金額の計算、差異の確認現場作業と同じかそれ以上

多くの現場で、準備と集計の合計が現場作業より長くなっています。現場の作業速度をいくら上げても、全体はあまり短くなりません。

まず、自社の棚卸がこの3工程にどう配分されているかを書き出してみてください。このあと挙げる方法のうち、どれが自社に効くかが判断できます。

準備を効率化する方法

準備で効くのは、「当日に迷う場面を前日までに消しておく」ことです。

方法1:保管場所を整理し、どこに何があるかを決めておく

置き場所が決まっていない在庫は、探す時間と数え漏れの両方を生みます。棚卸の前に、次の3つをそろえておきます。

  • 不要品・廃棄予定品を先に片づける(数える対象を減らす)
  • 同じ商品は1か所にまとめ、棚や区画に名前をつける
  • 棚や区画の名前を書いた見取り図を1枚つくり、担当の割り振りに使う

普段から整理・整頓(5S)が回っている現場ほど、この準備は短く済みます。逆に、棚卸の前日にしか片づけない現場では、片づけ自体が準備の大半を占めます。

方法2:担当・スケジュール・数え方のルールを先に決める

当日の混乱の多くは、担当と数え方が決まっていないことから起きます。前日までに次を決めて、手順書にしておきます。

決めること例
担当見取り図の区画ごとに担当者を割り振る。1区画1人が基本
時間開始・終了の時刻と、冷凍庫など厳しい場所の滞在時間の上限
数える単位ケースで数えるか、バラで数えるか。端数の扱い
期限・状態期限切れ・期限間近・破損品を分けて数えるか
迷ったとき「リストにない商品は、その場で判断せず全部記録する」

数える単位は、とくにゆれやすいところです。同じ商品を、ある人はケースで、別の人はバラで数えると、集計で必ず合わなくなります。単位の決め方は仕掛品の棚卸でも詳しく書いています。

方法3:リストを毎回作り直さない

先月からの入荷で商品が増えていれば、その分リストを直す必要があります。これを毎回ゼロからやっていると、棚卸の前に必ず「リスト整備の日」が発生します。

前回の棚卸結果を、そのまま次回の下敷きにします。差分だけを直せばよくなるので、準備の時間は大きく縮みます。

さらに、リストに載っていない商品が出てきても現場で判断させず、「あるものは全部記録する」に統一します。要る・要らないの判断は、あとから責任者が記録を見て行えばかまいません。確認の往復と数え漏れが同時に減ります。

現場を止めずに数える方法

棚卸の日は、出荷や入荷を止めるかどうかが悩みどころです。止める時間は、締めの決め方と棚卸の進め方で短くできます。

方法4:締めの時点を決めて、止める時間を短くする

棚卸で数えた数量は、「いつの時点の在庫か」が決まっていないと、帳簿と突き合わせられません。この基準の時点を、先に決めておきます。

  1. 基準の時点(例:前日の出荷終了時)を決める
  2. その時点までの入荷・出荷の伝票を、すべて処理しておく
  3. 数えている最中に動いたものは、別の用紙や記録に書き出しておく
  4. 集計のときに、その分を足し引きする

これができると、入出庫を完全に止めるのは「数えている棚の前」だけで済みます。反対に、締めが決まっていないと、数えたあとに伝票が出てきて差異の原因がわからなくなります。

方法5:一斉棚卸と循環棚卸を使い分ける

全部を同じ日に数える一斉棚卸は、1日だけ現場を止めれば済む反面、その日の負担が大きくなります。場所や品目を分けて、日をずらして順番に数える循環棚卸なら、1回あたりに止める範囲が小さくなります。

一斉棚卸循環棚卸
数え方全在庫を同じ日に数える場所・品目を分け、順番に数える
現場を止める範囲全体を一度に数える区画だけ
向いている場面決算の期末、品目が少ない現場品目が多い、出荷を止められない現場
注意点人と時間を一度に集める必要がある区画ごとに締めの時点をそろえる

決算のための棚卸は期末の数量が必要になるため、循環棚卸だけで済ませられるかは顧問税理士と相談してください。日々の在庫合わせに循環棚卸を使い、期末だけ一斉にする会社もあります。

方法6:数えた場所に目印をつけ、数え直しを防ぐ

数え終わった棚や箱に、付箋やチェックシールで目印をつけます。二重に数えたり、数え漏れたりするのを防げます。棚卸の効率化でよく挙がる、いちばん手軽な方法です。

目印は「数えた人」と「時刻」も書けるものにしておくと、あとで差異が出たときに、誰に確認すればいいかがすぐわかります。

方法7:2人1組をやめられる記録の手段にする

「1人が数えて、1人が書く」という分担は、紙の棚卸では合理的です。手袋をしたまま紙に書くのは難しく、冷凍庫ではなおさら手がかじかみます。

ただし、この形をとると投入できる人数が実質的に半分になります。4人集めても2組にしかならず、人を増やしても作業はそこまで速くなりません。

片手で記録できる手段に変えると、1人が1つの区画を受け持てます。人を増やした分だけ作業が速くなり、深夜や早朝に人を集める必要も薄れます。ただし、記録の手段を変えるだけでは足りません。次の「商品の特定を現場から外す」とセットにしてはじめて、1人作業が成立します。

方法8:数量と一緒に、状態も見ておく

数えるついでに、破損・汚れ・期限切れ・期限間近を分けて記録します。食品を扱う現場では、とくに期限の確認が欠かせません。棚卸のときに期限が近いものを見つけられれば、出荷の優先順位を変えるなどの手を打てます。

ただし、全部の商品の期限を棚卸で書き取ろうとすると、終わらなくなります。棚卸では「期限切れ・期限間近を分けて数える」までにとどめるのが現実的です。食品工場での線引きは食品工場の棚卸で詳しくまとめています。

集計を効率化する方法

数量がそろってからの集計は、見落とされやすい一方で、いちばん縮みやすい工程です。

方法9:現場に商品を特定させない

手書きの用紙には、書いた人のくせがそのまま残ります。「たまねぎ」「玉ねぎ」「玉葱(加工)」がすべて別の書き方で並ぶと、集計する人はどれがどの商品かを1つずつ特定することになります。

「これは棚卸すべき商品か」がわからないときに、いちいち上司に確認していました。写真なら撮って数えておけば、後で上司が写真を見て判断できるので、自分は数えることに集中できます。 — 株式会社 豊洲漁商産直市場 様

現場に残してもらうのは、数量と、あとから見て判別できる情報の2つだけにします。判別できる情報とは、現品のラベルや、商品そのものが写った写真です。リストに商品の画像を載せておくのも、同じ理由で効きます。

商品の特定と集計は、事務所側でまとめて行います。この線引きができると、現場作業から「探す」「調べる」「確認する」が消えます。

方法10:集計を1人に任せない

手書きメモから商品を特定できるのは、商品名を把握している人だけです。結果として集計が特定の1人に集中し、その人の予定が棚卸の日程を決めることになります。担当者が休めば、棚卸が止まります。

記録に写真や現品ラベルが残っていれば、商品名に詳しくない人でも候補から選ぶ作業ができます。作業を複数人で分担でき、担当者が変わったときのリスク対策にもなります。

方法11:金額と差異が自動で出る形にする

数量が揃ってからも、単価をかけて金額を出し、帳簿や前回との差異を確認する作業が残ります。

エクセルで続けるなら、少なくとも次の3つはやっておきます。

  • 商品マスタ(品目・単価)を別シートに分け、棚卸表からは参照するだけにする
  • 数量を入れたら金額と前回差異が計算される式にしておく
  • 拠点ごとにシートを分けず、同じ形の表を縦に並べて集計する

ただし、拠点や品目が増えるほど、式の崩れや行ずれのチェックに時間がかかるようになります。そこが重くなってきたら、数量を確定した時点で金額と差異まで出る道具に移す時期です。

方法12:差異が出たら、原因の順に切り分ける

帳簿と数が合わないときは、闇雲に数え直さず、起きやすい原因から順に確かめます。

  1. 数え漏れ・二重に数えていないか(目印と担当表で確認)
  2. 締めの時点より前の伝票が、処理されずに残っていないか
  3. 数えている最中に動いたものを、差し引いたか
  4. 数える単位(ケース・バラ)が人によってずれていないか

ここまでで説明がつかない差異だけを、数え直しの対象にします。全部を数え直すより、ずっと早く終わります。

道具で効率化する方法の選び方

運用を見直したうえで、さらに短くしたいときは道具を入れます。よく使われる道具を、向き不向きで並べると次のとおりです。

道具仕組み向いている在庫前提になる準備
エクセル数量を手で入力し、式で集計する品目が少なく、拠点が1つ商品マスタと計算式の整備
バーコード・ハンディ商品のバーコードを読み取って数える仕入れたままのパッケージが多い全商品へのバーコード貼付
RFIDタグを電波でまとめて読み取る高単価品、アパレルなど全商品へのタグ貼付・読取機
棚卸アプリ(写真で記録)現物を撮って数量を入れ、あとで商品を割り当てるバーコードを貼れない品、品目の入れ替わりが多い商品マスタ(手持ちの一覧で可)

エクセルは拠点・品目が増えると転記が増え、バーコードは小分け・加工後の品や貼れない品に、RFIDは単価の低い大量品や金属・水分の多い品に向きません。どの道具が合うかは、「在庫にバーコードを貼れるか」でおおむね決まります。貼れない在庫が多いなら、貼らずに済む方法を選びます。詳しくはバーコードが使えない在庫の棚卸で整理しています。

手をつける順番

いきなり全部を変える必要はありません。効果が出やすい順に並べると次のようになります。

  1. 保管場所の整理と、担当・数え方のルールを決める(方法1・2)
  2. 締めの時点を決め、止める範囲を小さくする(方法4・5)
  3. 現場に商品を特定させるのをやめる(方法3・9)
  4. 金額と差異の計算を手作業から外す(方法11)
  5. その結果として、2人1組をやめられるか検討する(方法7)

1〜3ができると、現場の作業は「数える」だけになります。そこまで来ると、棚卸の日程を特定の人の予定に合わせる必要がなくなります。

写真で記録すると、準備と集計がまとめて軽くなる

ここまでの方法の多くは、突き詰めると「現場が記録に残せる情報が少なすぎる」ことが共通の原因です。紙に書き取れるのは商品名と数量だけで、それ以上の情報は残りません。

現物の写真を記録として残すと、次のことが同時に起こります。

  • リストに無い商品も、そのまま撮って先に進める(方法3)
  • 片手で記録できるので、1人で進められる(方法7)
  • 商品名を書かなくてよいので、表記のゆれが起きない(方法9)
  • 写真を見れば誰でも商品を選べるので、集計を分担できる(方法10)

弊社が提供しているラクだなは、この考え方をそのまま形にした棚卸アプリです。現場はスマホで現物を撮って数を入れ、事務所は写真を見てAIが並べた候補から商品を選びます。商品を割り当てれば、棚卸表と金額、前回との差異まで出ます。

棚卸アプリ「ラクだな」のスマホの撮影・数量入力画面と、パソコンの商品割当画面

バーコードやQRコードの発行・貼り付けは必要ありません。電波が届かない冷凍庫でも、事前に一度画面を開いて準備しておけば撮影と数量入力ができます。ラクだなの使い方では、実際の画面で流れをご覧いただけます。

効率化できたかどうかを確認する

やり方を変えたあと、本当に短くなったのかを確かめないと改善は続きません。次の4つを、棚卸のたびに記録してください。特別な仕組みは要らず、メモで十分です。

記録する項目見方
準備にかけた時間整理・リスト整備・印刷・配布にかかった時間。ゼロに近づいているか
現場作業の時間と人数延べ時間(時間 × 人数)で見る。人数が減っていれば投入コストは下がっている
集計にかけた時間転記・特定・金額計算・差異確認の合計。ここがいちばん縮みやすい
差し戻しの件数現場への問い合わせや数え直しの回数。運用が噛み合うほど減る

とくに見てほしいのは、延べ時間と差し戻し件数です。現場の実作業時間が同じでも、人数が半分になっていれば投入した人件費は半分になっています。差し戻しが減っていれば、現場と事務所の待ち時間も一緒に消えています。

2〜3回分を並べると、どの工程がまだ重いのかがはっきりします。そこだけを次の打ち手の対象にすれば、やみくもに全部を変えずに済みます。

まとめ

棚卸を効率化する方法をまとめます。

  • 時間を食っているのは現場作業ではなく、準備と集計
  • 準備では、保管場所の整理と、担当・数える単位・迷ったときのルールを先に決める
  • 締めの時点を決め、一斉と循環を使い分けると、現場を止める範囲が小さくなる
  • 商品の特定を事務所に寄せ、判別できる材料を残すと、集計を分担できる
  • 差異は原因の順に切り分け、説明がつかない分だけを数え直す

現物を数えるのは、これからも人の仕事です。棚卸の効率化で短くできるのはその前後なので、まずは自社の棚卸を準備・現場・集計の3つに分けて、どこに何時間かかっているかを書き出すところから始めてみてください。

棚卸のやり方そのものを見直したい方には、圧倒的にラクにする棚卸の方法を無料でご用意しています。現場と事務所で何が起きているのか、実際の画面つきでまとめた資料です。

※本記事の内容は2026年9月時点のものです。

よくある質問

Q. 棚卸を効率化するには、まず何から手をつければいいですか?
A. 現場に商品を特定させるのをやめることからです。「あるものは全部記録する」に統一し、要る・要らないの判断と商品の特定を事務所側に寄せると、現場作業と差し戻しの往復が同時に減ります。
Q. 棚卸のあいだ、出荷や入荷を止めないといけませんか?
A. 止める時間は短くできます。棚卸の基準時点を決めて、それより前の伝票はすべて処理し、数えている最中に動いた分は別に記録して、あとで差し引きます。一斉に止めるのが難しい場合は、場所や品目を分けて順番に数える循環棚卸も使えます。
Q. 棚卸にはどのくらい時間がかかるのが普通ですか?
A. 品目数と拠点数で大きく変わるため一概には言えませんが、300〜800品目の1拠点で、準備から集計まで含めると半日から一日かかるケースが多く見られます。現場で数える時間より、準備と集計の合計のほうが長くなることが少なくありません。
Q. 棚卸の作業自体を自動化できますか?
A. 現物を数える作業は人の仕事のままです。自動化できるのは、商品を特定する・台帳と突き合わせる・棚卸表を作る・金額を集計するといった、数える前後の作業です。
Q. 2人1組での棚卸をやめることはできますか?
A. 記録の手段を紙から変えれば可能です。紙に書くために2人必要だったのであれば、片手で記録できる方法に変えることで1人ずつが別の棚を担当でき、投入人数をそのまま作業速度に反映できます。
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