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食品工場の棚卸|常温・冷蔵・冷凍で段取りを分ける進め方

#棚卸#食品

「冷凍庫の中がいちばん時間がかかる」「期限とロットまで見ていたら終わらない」。食品工場の棚卸でうかがうご相談は、この2つに集中します。

食品工場の棚卸を調べると、多くの記事が在庫管理システムや需要予測の話に進みます。ただ、現場で困っているのはもっと手前です。数える場所が常温・冷蔵・冷凍に分かれていて、それぞれ作業の条件が違う。同じやり方で回そうとするから、どこかで必ず詰まります。

この記事では、食品工場の棚卸を温度帯で段取り分けする考え方と、期限・ロット・数える単位をどこまで棚卸で扱うかの線引きを整理します。

この記事でわかること

  • 食品工場の棚卸が、一般的な工場と違う4つの点
  • 常温・冷蔵・冷凍で段取りを分ける考え方と、回る順番
  • 賞味期限とロットを、棚卸でどこまで取るかの線引き
  • ケース・バラ・重量が混ざる現場での、数える単位の決め方
  • 当日の段取りチェックリスト

食品工場の棚卸が、一般的な工場と違う4つの点

工場の棚卸として一般に語られる手順は、常温の倉庫に整然と部品が並んでいる前提で書かれています。食品工場はその前提が4か所で崩れます。

違い何が起きるか
数える場所が温度帯で分かれている常温・冷蔵・冷凍で作業条件が違い、同じ手順が通らない
中身が見えない、ラベルがない開封後の原材料や加工途中の中間財に商品名が残っていない
期限とロットがついて回る数量以外の情報を取ろうとして作業が膨らむ
1個あたりの重さが違う個数を数えても金額に換算できない

順番に見ていきます。

違い1:数える場所が温度帯で分かれている

食品工場の在庫は、常温倉庫、冷蔵庫、冷凍庫、そして製造ライン上に散らばっています。これを「倉庫の棚卸」としてひとまとめに段取りすると、冷凍庫のところで必ず遅れます。

温度帯ごとに、制約はまったく違います。

場所作業上の制約
常温倉庫制約が少ない。ここでの進め方がそのまま他に通ると誤解しやすい
冷蔵庫扉を開けたままにできない。出入りのたびに作業が分断される
冷凍庫手袋が外せない。紙が結露で濡れる。長時間の滞在は安全面から避けたい
製造ライン上ラインを止めるかどうかの判断が先に必要になる

冷凍庫で紙とペンが機能しない理由は、寒いからだけではありません。書くために手袋を外す必要があり、そのたびに作業が止まるからです。手がかじかむと字も乱れ、あとで読めない記録が残ります。

段取り:温度帯ごとに「記録の手段」と「滞在時間」を先に決める

温度帯ごとに、何を使って記録するか、どのくらいの時間で出るかを決めてから入ります。

場所決めること
常温倉庫記録のルールをここで固める。表記や単位の決めごとを全員で合わせる
冷蔵庫扉を開ける回数を減らす。棚単位でまとめて記録し、判断は庫外で行う
冷凍庫庫内でやることを「記録だけ」に絞る。迷う作業を持ち込まない
製造ライン上数える対象をどこで区切るか、事前に決めておく

冷凍庫で時間がかかっている現場のほとんどは、庫内で「これは何の商品か」「これは数える対象か」を考えています。その判断を庫外に出すだけで、滞在時間は大きく変わります。

違い2:中身が見えない、ラベルがない

食品工場の在庫は、仕入れたままの姿で棚に残っているとは限りません。

  • 開封した粉体や液体は、別の容器に移されている
  • 一次加工を終えた中間財には、商品名の入ったラベルがない
  • 小分けした商品は、元のパッケージから離れている

この状態で現場に「商品名と数量を書いてください」と頼むと、書ける人が限られます。商品を見分けられるベテランしか棚卸に入れなくなり、棚卸の日程がその人の予定に縛られます。

紙だと「これ何の商品?」と後から聞かれても答えられませんでした。写真があれば、あとから説明できます。 — 食品加工 / 現場担当

線引き:商品の特定を現場から外す

現場に残してもらうのは、数量と、あとから見て判別できる情報の2つだけにします。判別できる情報とは、現品のラベルか、商品そのものが写った写真です。

商品名の特定と台帳との突き合わせは、事務所側でまとめて行います。この線引きができると、現場作業から「探す」「調べる」「確認する」が消え、商品名に詳しくない人でも棚卸に入れるようになります。

バーコードやラベルを貼って解決しようとする前に、この線引きが自社で成立するかを見てください。考え方はバーコードが使えない在庫の棚卸で詳しく整理しています。

違い3:賞味期限とロットがついて回る

食品工場では、数量以外にも見ておきたい情報があります。賞味期限、消費期限、製造ロット。とくにロット逆転(前回より古いロットを後から納品してしまうこと)は取引先の信用に直結するため、現場の意識も高い項目です。

そのため「せっかく全部の在庫を見るのだから、期限とロットも一緒に取ろう」という話になりがちです。ここで作業量が跳ね上がります。

ただ、食品工場ではすでに別の記録が動いています。2018年(平成30年)6月に公布された食品衛生法等の改正により、2021年(令和3年)6月1日から原則としてすべての食品等事業者に、HACCPに沿った衛生管理が義務づけられています。事業者は衛生管理計画を作成したうえで、その実施状況を記録し、保存することが求められます(厚生労働省「HACCPに沿った衛生管理の制度化に関するQ&A」)。

つまり、原材料の受入れや製造工程の記録は、棚卸とは別の仕組みですでに取られています。

線引き:棚卸で期限とロットを全部取ろうとしない

棚卸の目的は、決算に使う数量と金額を確定させることです。トレーサビリティの確保はHACCPの記録と出荷の記録が担っています。役割を分けると、棚卸で取るべき範囲は次のところまでに収まります。

情報棚卸で取るか
数量取る。棚卸の本体
期限切れ・期限間近のもの分けて数える。評価減や廃棄の判断材料になるため
すべての在庫の賞味期限取らない。作業量に見合わない
ロット番号取らない。HACCPの記録と出荷記録が担う

「期限切れと期限間近を分けて数える」だけにすると、現場の作業は「数える」と「分ける」の2つで済みます。全品の期限を書き取る運用とは、かかる時間がまったく違います。

なお、廃棄が決まった在庫の会計上の扱い(売上原価に入れるか営業外費用にするか)は、顧問税理士や監査法人にご確認ください。棚卸の現場で決める話ではありません。

違い4:1個あたりの重さが違う

食品工場や食品卸では、1個あたりの重さが一定でない商品(不定貫品)が珍しくありません。精肉、鮮魚、切り身、ブロックでの仕入れなどが該当します。

棚卸しの大半が不定貫商品で、計量器で重さを測って紙に記録しています。 — 食品卸 / 管理担当

この場合、「3ケース」と数えても金額は出ません。重量が必要になります。一方で、同じ棚に個数で数えられる商品も並んでいます。現場で「これは重さ、これは個数」と判断させると、数え方が人によって変わり、回によっても変わります。

線引き:数える単位を先に決めて、毎回同じ単位で数える

商品ごとに、現場で数える単位をあらかじめ決めておきます。

  1. 計量が必要な商品と、個数で数えられる商品を先に仕分けする
  2. 計量する商品は、どの単位(kg・gなど)で記録するかを決める
  3. 個数で数える商品は、ケース・バラのどちらで数えるかを決める
  4. 単位の換算と金額への計算は、事務所側でまとめて行う

大事なのは、どの単位を選ぶかより、毎回同じ単位で数えることです。前回はケース、今回はバラで数えると、その差分がそのまま棚卸差異として出てきます。単位の決め方については仕掛品の棚卸でも整理しています。

当日の段取り

ここまでの4つを、当日の流れに落とすと次のようになります。

順番やることねらい
1常温倉庫から始める記録のルールを全員で合わせてから低温へ入る
2冷蔵庫へ移る棚単位でまとめて記録し、扉を開ける回数を減らす
3冷凍庫へ入る庫内では記録だけ。判断と入力は出てから
4製造ライン上を最後に見るラインの区切りに合わせる
5事務所で特定・換算・集計商品の特定、単位の換算、金額と差異の計算

冷凍庫を最後に回す現場が多いのですが、疲れた状態で寒い場所に入るのは作業効率の面でも安全の面でも不利です。手順に慣れた直後、かつ体力が残っているうちに入るほうが、結果的に短く終わります。

段取りのチェックリスト

棚卸の前日までに、次の5つが決まっているか確認してください。

  • 温度帯ごとの担当者と、回る順番が決まっている
  • 冷凍庫・冷蔵庫で「書く」作業が発生しない記録方法になっている
  • リストに載っていない商品が出たときの扱いが決まっている(現場で判断させない)
  • 商品ごとの数える単位が決まっていて、前回と同じである
  • 期限とロットをどこまで取るかが決まっている

このうち1つでも決まっていないと、その場で現場が判断することになり、人によって記録が変わります。

自動化できる作業と、人が続ける作業

誤解されやすいところなので、線引きをはっきりさせておきます。

作業自動化できるか
現物を数えるできない。人の仕事のまま
現物を計量するできない。人の仕事のまま
商品を特定するできる
台帳・マスタと突き合わせるできる
棚卸表を作るできる
金額・前回差異を集計するできる

冷凍庫に入って数える作業がなくなるわけではありません。短くできるのは、その前後にくっついている準備と集計です。食品工場の場合、ここに温度帯ごとの移動と待ち時間が乗るので、削れる幅はむしろ大きくなります。

写真で記録すると、温度帯の制約が外れる

ここまでの4つの違いは、突き詰めると「現場が記録に残せる情報が少なすぎる」ことに行き着きます。紙に書き取れるのは商品名と数量だけで、それ以上は残りません。だから庫内で判断するしかなくなります。

現物の写真を記録として残すと、次のことが同時に起こります。

  • 商品名を書かなくてよいので、手袋のまま片手で記録が終わる(違い1)
  • ラベルのない中間財も、撮って先に進める(違い2)
  • 期限切れ・期限間近のものは、撮り分けておけば後から判断できる(違い3)
  • 写真を見れば誰でも商品を選べるので、集計を分担できる(違い2・4)

弊社が提供しているラクだなは、この考え方をそのまま形にした棚卸アプリです。現場はスマホで現物を撮って数を入れるだけ、事務所は写真を見てAIが並べた候補から商品を選ぶだけで、棚卸表と金額、前回との差異まで仕上がります。

棚卸アプリ「ラクだな」のスマホの撮影・数量入力画面と、パソコンの商品割当画面

食品工場でお使いいただくうえで関係するのは、次の点です。

  • 保管場所ごとに分けて棚卸できる。棚・冷蔵庫・倉庫といった拠点内の置き場所単位で撮影と数量入力ができ、棚卸表にも保管場所の列が出ます
  • 電波が届かない場所でも撮影と数量入力ができる。ただし事前に、電波の良い場所で撮影一覧画面を一度開いて準備しておく必要があります
  • 数量入力では計算式が使えます。ケース×入数のような計算を、その場で電卓を叩かずに入れられます
  • バーコードやQRコードの発行・貼り付けは必要ありません

食肉加工・製造のタカラ食品工業株式会社様(約800品目)にも、紙の棚卸リストに無い商品の数え漏れをなくす目的でお使いいただいています。実際の画面はラクだなの使い方、機能の一覧はラクだなの機能でご覧いただけます。

まとめ

食品工場の棚卸の進め方をまとめます。

  • 数える場所が温度帯で分かれている。常温・冷蔵・冷凍で段取りを分ける
  • 冷凍庫では「記録だけ」に絞る。判断と入力は庫外に出してから行う
  • 常温 → 冷蔵 → 冷凍の順で回る。慣れて体力が残っているうちに低温へ入る
  • 商品の特定は現場から外す。現場に残すのは数量と、判別できる情報の2つ
  • 期限とロットを棚卸で全部取らない。期限切れ・期限間近を分けて数えるまで
  • 数える単位は商品ごとに先に決め、毎回同じ単位で数える

まずは、自社の棚卸が温度帯ごとに何時間かかっているかを書き出してみてください。冷凍庫の時間が突出しているなら、庫内で判断が発生していないかを疑うのが近道です。

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※本記事の内容は2026年9月時点のものです。

よくある質問

Q. 食品工場の棚卸は、どの場所から手をつければいいですか?
A. 常温倉庫から始めて、冷蔵庫、冷凍庫の順に進めるのが基本です。作業に慣れないうちに低温の場所へ入ると、迷った分だけ滞在時間が伸びます。常温で記録のルールを体に入れてから低温へ移ると、冷凍庫での作業が短く済みます。
Q. 棚卸のときに賞味期限やロット番号も全部記録すべきですか?
A. 棚卸で全部取ろうとすると終わりません。棚卸の目的は数量と金額の確定なので、期限は「期限切れ・期限間近のものを分けて数える」までにとどめ、ロットの追跡はHACCPの記録や出荷の記録に任せるのが現実的です。
Q. 1個あたりの重さが違う商品(不定貫)はどう数えますか?
A. 数える単位を先に決めて、毎回同じ単位で数えることが第一です。計量が必要なものは計量して重量で、そうでないものは個数で記録し、金額への換算は事務所側でまとめて行います。現場が単位を選ぶ状態にしておくと、回によって数え方が変わり差異の原因になります。
Q. 冷凍庫の中では紙もスマホも使いにくいのですが、どうすればいいですか?
A. 低温下で「書く」作業をなくすのが先です。紙とペンは手袋と結露に弱く、書くために手袋を外すと作業が止まります。片手で記録できる手段に変え、判断や入力が必要な作業は庫外に出してからまとめて行う形にすると、庫内の滞在時間そのものが短くなります。
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