賞味期限管理とは|消費期限との違いと、食品卸・食品工場で回る進め方
「期限切れに気づくのは、いつも出荷の直前」「毎月の賞味期限チェックだけで丸1日つぶれる」。食品卸や食品工場の方から、期限まわりでうかがうご相談はこの2つに集中します。
賞味期限管理を調べると、多くの記事が「期限を管理しましょう、そのためにシステムを入れましょう」で終わります。ただ、業務用の現場で困っているのはその手前です。期限は入庫した時点の情報で、出荷が進むとすぐに古くなる。しかも取引先の納品期限があるので、賞味期限よりずっと前に「出せない在庫」になる。この2つを押さえないまま管理を始めると、チェックの手間だけが増えます。
この記事では、賞味期限管理の定義と消費期限との違いを一次情報で確認したうえで、食品卸・食品工場で毎月回せる進め方と、管理方法の選び方を整理します。
この記事でわかること
- 賞味期限管理の定義と、賞味期限・消費期限の違い
- 業務用の現場で賞味期限管理が難しくなる4つの理由
- 品目ごとに「最も早い期限1つ」だけを見る管理の進め方
- 紙・エクセル・システムの向き不向き
- 棚卸と賞味期限チェックの役割の分け方
賞味期限管理とは
賞味期限管理とは、在庫として持っている食品の期限を把握し、期限切れや納品期限切れで出せなくなる前に、出荷の順番を変える・値引きや転用に回すといった手を打つ業務のことです。
ポイントは「期限を記録すること」ではなく「手を打つこと」にあります。期限を台帳に書き写していても、期限が迫った在庫に誰も気づかなければ、最後は廃棄になります。賞味期限管理の成否は、期限が迫った在庫を手を打てるうちに見つけられるかどうかで決まります。
賞味期限と消費期限の違い
食品の期限表示には「賞味期限」と「消費期限」の2つがあります。消費者庁の「加工食品の表示に関する共通Q&A(第2集:消費期限又は賞味期限について)」では、それぞれ次のように定義されています。
| 消費期限 | 賞味期限 | |
|---|---|---|
| 意味 | 腐敗・変敗などの品質の劣化により、安全性を欠くおそれがないと認められる期限 | 期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限 |
| 過ぎたら | 食べないようにする | 必ずしもすぐに食べられなくなるわけではない |
| 表示される食品の例 | 弁当、調理パン、そうざい、生菓子類、食肉、生めん類 | スナック菓子、即席めん類、缶詰、牛乳、乳製品 |
| 表示のしかた | 年月日 | 年月日。ただし製造日から期限までが3か月を超えるものは年月でもよい |
どちらも開封前の状態で、定められた方法で保存した場合の期限です。
事業者として押さえておきたいのは最後の行です。同じ倉庫の中に「年月日」で書かれた商品と「年月」だけの商品が混ざります。年月表示の商品は、その月の末日までと読むのか、社内で扱いを決めておかないと、担当者によって判断が変わります。
事業者にとって賞味期限管理が欠かせない理由
食品ロスの半分近くは食品製造業から出ている
農林水産省・環境省の推計では、2023年度(令和5年度)の日本の食品ロスは約464万トン、そのうち事業者から出る事業系食品ロスは231万トンです。事業系の内訳は、食品製造業が108万トン、外食産業が66万トン、食品小売業が48万トン、食品卸売業が9万トンで、食品製造業だけで事業系の半分近くを占めます(環境省「我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和5年度)」)。
期限切れで捨てた在庫は、仕入れた金額がそのまま損失になるうえ、廃棄の手間と処分費もかかります。
賞味期限の前に「納品期限」が来る
業務用の現場で賞味期限管理が欠かせない理由は、もう1つあります。取引先の納品期限です。
食品業界には、製造日から賞味期限までの期間を3つに分け、最初の3分の1が過ぎるまでに小売店へ納品するという商慣習があります。いわゆる「3分の1ルール」です。
たとえば賞味期間が180日の商品なら、次のようになります。
| ルール | 納品できるのは製造から | 賞味期限までの残り日数 |
|---|---|---|
| 3分の1ルール | 60日目まで | 120日以上残っていても、61日目以降は納品できない |
| 2分の1ルール | 90日目まで | 90日以上残っていれば納品できる |
賞味期限まで120日残っていても、納品先から見れば「もう入れられない商品」です。小売向けに出す在庫では、卸や製造の倉庫で賞味期限そのものより納品期限のほうが先に来るのが普通です。外食向けなど、取引先によっては3分の1ルールが当てはまらないこともあります。
農林水産省は食品ロス削減のため、納品期限を2分の1に緩めるよう小売側に呼びかけています。納品期限を緩和した、または緩和を予定している食品小売事業者は、令和7年10月時点で377事業者です。ただ、取引先ごとにルールが違う状態はしばらく続きます。取引先別の納品期限を把握しておくことも、賞味期限管理の一部です。
業務用の現場で賞味期限管理が難しくなる4つの理由
スーパーの店頭での期限チェックと、卸や工場の倉庫での期限管理は、同じ「賞味期限管理」でも中身が違います。業務用の現場では、次の4つが重なります。
| 理由 | 何が起きるか |
|---|---|
| 期限は入庫した時点の情報 | 出荷が進むと台帳の期限と棚の実物がずれていく |
| 同じ品目に期限が何種類もある | 入荷のたびに期限が違い、どれを追えばいいかわからなくなる |
| 取引先ごとに納品期限が違う | 同じ在庫でも、出せる先と出せない先が分かれる |
| 棚卸は年2回、期限チェックは毎月 | 棚卸の仕組みだけでは期限の確認が追いつかない |
理由1:期限は入庫した時点の情報
期限は、入庫したときに記録されます。ところが出荷が進むと、台帳に残っている期限の商品はもう棚にない、ということが起きます。先入先出が徹底されていない現場ほど、このずれは大きくなります。
台帳上は「期限が迫っている」と出ているのに、棚を見に行くと新しいロットしかない。逆に、台帳上は問題ないのに、奥から古いロットが出てくる。これが続くと、現場は台帳の期限を信用しなくなり、結局は全部の棚を見て回ることになります。
理由2:同じ品目に期限が何種類もある
同じ品目でも、入荷のたびに期限は違います。月に4回入荷する品目なら、棚には期限の違う在庫が4種類並ぶこともあります。これを全部書き出そうとすると、チェックの作業量は品目数×期限の種類の数まで膨らみます。
理由3:取引先ごとに納品期限が違う
同じ商品でも、3分の1ルールの取引先と2分の1ルールの取引先では、出せなくなる日が違います。自社の倉庫の中だけを見ていると、この違いに気づけません。
理由4:棚卸は年2回、期限チェックは毎月
棚卸は年2回という会社でも、賞味期限のチェックは毎月行っている現場が多くあります。年2回と毎月では、回数にして6倍です。
棚卸と同じやり方で期限チェックを回そうとすると、毎月棚卸をしているのと変わらない負荷になります。期限チェックには、棚卸とは別の、もっと軽いやり方が必要です。
賞味期限管理の進め方
ここまでの4つの理由をふまえると、業務用の現場で回る賞味期限管理は次の5ステップになります。
| ステップ | やること |
|---|---|
| 1 | 入庫時に期限を記録する |
| 2 | 品目ごとに「最も早い期限1つ」だけを追う |
| 3 | 期限までの残り日数でルールを決める |
| 4 | チェックの頻度を品目ごとに決める |
| 5 | 廃棄したものを金額で記録する |
ステップ1:入庫時に期限を記録する
期限の情報が生まれるのは入庫のときです。ここで記録しておかないと、あとから棚を回って調べ直すことになります。外箱に印字された期限をそのまま残す方法がいちばん確実で、手で書き写すと、書き間違いや読み違いが入り込みます。
ステップ2:品目ごとに「最も早い期限1つ」だけを追う
ここが一番大事なところです。全部の期限を追わず、品目ごとに「いま棚にある中で最も早い期限」1つだけを見ます。
最も早い期限の在庫が出荷されたら、棚を見て、次に早い期限に書き換えます。これを繰り返していれば、期限が迫っている品目が目に入るようになります。理由1の「台帳と実物のずれ」も、書き換えのたびに棚の実物を見るので、ずれたまま放置されません。
全部の期限を持つ方法と比べると、次のような違いがあります。
| 全部の期限を追う | 最も早い期限1つだけを追う | |
|---|---|---|
| 記録する量 | 品目数×期限の種類 | 品目数と同じ |
| チェックの対象 | 全品目の全ロット | 期限が迫っている品目だけ |
| 台帳と実物のずれ | 出荷のたびに増える | 書き換えのたびに直る |
ロットごとの追跡が必要な場面(回収や事故対応)は、HACCPの記録や出荷の記録で追えるようにしておきます。日々の期限チェックの仕組みにまで、全ロットを持ち込む必要はありません。
ステップ3:期限までの残り日数でルールを決める
期限が迫った在庫を見つけても、どうするかが決まっていなければ、担当者が判断に迷ううちに時間が過ぎます。残り日数ごとに、やることを先に決めておきます。次の表は一例で、業界で決まった基準ではありません。
| 残り日数(例) | やること |
|---|---|
| 納品期限まで30日 | 出荷の順番を前に出す。営業に共有する |
| 納品期限まで14日 | 納品期限の緩い取引先に振り向ける。値引きや社内転用を検討する |
| 納品期限切れ | 通常の出荷を止める。処分か転用かを決める |
日数は品目の賞味期間によって変えてかまいません。大事なのは、基準にするのが賞味期限ではなく納品期限であることです。賞味期限を基準にすると、気づいたときにはもう出せなくなっています。
ステップ4:チェックの頻度を品目ごとに決める
全品目を毎月チェックする必要はありません。賞味期間が短い品目、動きの遅い品目、過去に廃棄が出た品目は頻度を上げ、賞味期間が1年を超える品目や毎日動く品目は間隔を空けます。
頻度に差をつけるだけで、毎月のチェックにかかる時間はかなり変わります。
ステップ5:廃棄したものを金額で記録する
期限切れで廃棄したものは、品目・数量・金額・理由を記録します。個数だけでは、どの品目の改善を優先すべきかがわかりません。金額で並べると、少数の品目に廃棄が集中していることが見えてきます。そこが、発注量や頻度を見直すべき品目です。
なお、廃棄した在庫の会計上の扱いは、顧問税理士や監査法人にご確認ください。
賞味期限管理の方法を比べる
賞味期限管理の方法は、大きく分けて4つあります。
| 方法 | 向いている現場 | 限界 |
|---|---|---|
| 紙の台帳・チェック表 | 品目が少なく、担当者が1人で見られる | 書き写しの手間と誤記。事務所から状況が見えない |
| エクセル | 品目が数百程度で、入力担当を決められる | 現場で入力しにくい。更新が止まると台帳が信用されなくなる |
| 在庫管理システム・倉庫管理システム(WMS) | 入出庫をすべてシステムで回している | 導入費用と教育の時間がかかる。バーコード運用が前提のものが多い |
| スマホで記録するアプリ | 現場で入力したい。バーコードがない商品が多い | 通信が必要なものは冷凍庫や倉庫の奥で使えないことがある |
システムを入れるときに注意したいのは、現場で期限を入力する手間が減るかどうかです。期限の入力が面倒な仕組みは、最初の数か月で更新が止まります。更新が止まった台帳は、紙の台帳より信用されません。
もう1つは、冷凍庫や倉庫の奥で使えるかです。業務用の現場では、電波が届かない場所に在庫がある、ということがよくあります。
棚卸と賞味期限チェックの役割を分ける
「どうせ棚卸で全部の在庫を見るのだから、そのときに期限も全部取ればいい」と考えがちですが、棚卸で全品の期限を書き取ろうとすると、棚卸そのものが終わらなくなります。
役割を分けると、次のように整理できます。
| 棚卸 | 賞味期限チェック | |
|---|---|---|
| 目的 | 数量と金額を確定させる | 期限が迫った在庫に手を打つ |
| 頻度 | 年2回〜月1回 | 月1回を基本に、品目ごとに調整 |
| 期限の扱い | 期限切れ・期限間近のものを分けて数える | 品目ごとに最も早い期限を確認し、書き換える |
棚卸の日に期限を全部取るのではなく、期限チェックの記録を棚卸の日にも使う、と考えると両方が軽くなります。食品工場の棚卸で期限とロットをどこまで扱うかは、食品工場の棚卸の進め方で詳しく整理しています。
自動化できる作業と、人が続ける作業
誤解されやすいところなので、線引きをはっきりさせておきます。
| 作業 | 自動化できるか |
|---|---|
| 棚の前で現物を確かめる | できない。人の仕事のまま |
| 数量を数える | できない。人の仕事のまま |
| 期限の印字を書き写す | できる |
| 期限までの残り日数を計算する | できる |
| 期限が迫った品目を一覧にする | できる |
| 廃棄の金額を集計する | できる |
棚を見に行く作業がなくなるわけではありません。短くできるのは、書き写す・計算する・一覧にまとめるといった、見に行く作業の前後です。
写真で残すと、期限の記録が続く
賞味期限管理が続かない理由の多くは、期限を書き写す手間にあります。外箱の期限を読んで、紙に書いて、事務所でエクセルに打ち直す。この手間があるから、記録が後回しになり、台帳が古くなります。
期限の印字を写真で残すと、次のことが同時に起こります。
- 現場は撮るだけなので、期限を読んで書き写す手間がない
- 書き写しがないので、読み違い・書き間違いが入らない
- 年月表示・年月日表示の違いも、写真を見れば後から確認できる
- 事務所で写真を見れば、棚に行かなくても状況がわかる
弊社が提供しているラクだなは、棚卸アプリです。現場はスマホで現物を撮って数量を入れるだけ、事務所は写真を見てAIが並べた候補から商品を選ぶだけで、棚卸表まで仕上がります。商品と一緒に賞味期限の印字部分を撮っておけば、写真が期限の記録として残ります。

食品卸・食品工場でお使いいただくうえで関係するのは、次の点です。
- 電波が届かない場所でも撮影と数量入力ができる。ただし事前に、電波の良い場所で撮影一覧画面を一度開いて準備しておく必要があります
- バーコードやQRコードの発行・貼り付けは必要ありません。写真からAIが商品の候補を並べます
- 数量入力では計算式が使えます。ケース×入数のような計算を、その場で電卓を叩かずに入れられます
写真から賞味期限を読み取って自動で登録する機能と、確認が必要な商品を自動で一覧にする機能は、提供予定です。提供時期は個別にご案内しています。機能の一覧はラクだなの機能でご覧いただけます。
まとめ
賞味期限管理の要点をまとめます。
- 賞味期限管理とは、期限を把握して、出せなくなる前に手を打つ業務
- 賞味期限はおいしく食べられる期限、消費期限は安全に食べられる期限。3か月を超える賞味期限は年月表示もある
- 小売向けに出す在庫では、賞味期限より先に取引先の納品期限が来る
- 全部の期限を追わず、品目ごとに「最も早い期限1つ」だけを追う
- 残り日数のルールは、賞味期限ではなく納品期限を基準に決める
- 廃棄は金額で記録し、廃棄が集中している品目から見直す
まずは、自社の倉庫で先月いくら分を期限切れで廃棄したかを書き出してみてください。金額の大きい上位10品目だけでも「最も早い期限1つ」を追い始めれば、翌月の廃棄は変わります。
棚卸の時間そのものを見直したい方は、棚卸に時間がかかる原因もあわせてご覧ください。やり方を具体的に知りたい方には、圧倒的にラクにする棚卸の方法を無料でご用意しています。
※本記事の内容は2026年9月時点のものです。
よくある質問
- Q. 賞味期限管理と消費期限管理は、分けて考える必要がありますか?
- A. 管理の手順は同じですが、期限を過ぎたときの扱いが違います。消費期限は安全に食べられる期限なので、過ぎたものは出荷も販売もできません。賞味期限はおいしく食べられる期限で、過ぎてもすぐに食べられなくなるわけではありませんが、小売向けの在庫は取引先の納品期限があるため、賞味期限よりかなり前に出せなくなります。
- Q. 賞味期限は全部の在庫について記録しないといけませんか?
- A. 全件を追いかけると続きません。まずは品目ごとに「いま棚にある中で最も早い期限」1つだけを見る形から始めるのが現実的です。最も早いものが出荷されたら、次に早い期限に書き換えます。これだけで、期限が迫っている品目を見落とさずに済みます。
- Q. 3分の1ルールとは何ですか?
- A. 製造日から賞味期限までの期間を3つに分け、最初の3分の1が過ぎるまでに小売店へ納品するという商慣習です。賞味期間が180日の商品なら、製造から60日を過ぎると納品できなくなります。農林水産省は食品ロス削減のため、納品期限を2分の1に緩めるよう呼びかけており、緩和に取り組む食品小売事業者は令和7年10月時点で377事業者です。
- Q. 賞味期限のチェックはどのくらいの頻度で行えばいいですか?
- A. 棚卸が年2回の会社でも、賞味期限のチェックは月1回を基本にしている現場が多いです。ただし品目ごとに差をつけてかまいません。賞味期間が短い品目や動きの遅い品目は頻度を上げ、賞味期間が1年を超える品目は間隔を空けると、チェックにかかる時間を抑えられます。
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