給食の棚卸|厨房のあるあると、月末をラクにする進め方
「数えるより、事務所でExcelに写すほうが長い」「同じ調味料が冷蔵庫と倉庫と棚にあって、その場で足し算している」「月末は、結局いつも同じ人が残る」。
給食の厨房で棚卸のお話を聞くと、だいたいこのあたりから始まります。社員食堂、病院、学校、介護施設。施設は違っても、月末の棚卸で困っていることはよく似ています。
給食の棚卸を調べても、出てくるのは飲食店向けの棚卸記事か、自治体の帳票や委託仕様書がほとんどです。この記事では、給食の厨房で聞いた棚卸と賞味期限の「あるある」を並べたうえで、その原因と、今のやり方を大きく変えずに月末をラクにする進め方をまとめます。
この記事でわかること
- 給食の厨房で、棚卸の対象になるもの
- 給食現場の棚卸と賞味期限のあるある
- あるあるが起きる3つの原因
- 期限切れが見つかったときに起きること
- 月末の棚卸をラクにする進め方
給食の厨房で、棚卸の対象になるもの
給食の厨房は、在庫の持ち方が飲食店や食品工場と少し違います。
厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」は、原材料の納入について「缶詰、乾物、調味料等常温保存可能なものを除き、食肉類、魚介類、野菜類等の生鮮食品については1回で使い切る量を調理当日に仕入れるようにすること」としています。
生鮮は当日使い切りが前提なので、月末に在庫として残るのは、主に次のようなものです。
- 調味料(使いかけの大きなボトルを含む)
- 乾物・粉類・缶詰
- 冷凍の肉・魚・野菜・加工品
どれも日持ちがする分、棚の奥に残りやすく、使いかけのものも混ざります。給食の棚卸で数え方と期限に迷うのは、このためです。
給食現場の棚卸あるある
まず、月末の棚卸で聞くあるあるです。
あるある1:紙に書いて、事務所でExcelに写し直す
棚卸リストを印刷して現場で数を書き込み、事務所に戻ってからExcelの棚卸表に1行ずつ写して集計する。この流れの現場が多くあります。
ある給食の厨房(大手給食会社が運営する施設)では、1回の棚卸に次の時間がかかっていました。
| 作業 | 時間 |
|---|---|
| 準備(最新の品目で棚卸表を作って印刷) | 10分 |
| 現場(2人1組で数えて紙に記入) | 90分 |
| 事務所(紙を見ながらExcelに転記・集計) | 90分 |
| 合計 | 190分 |
数える時間と同じだけ、転記と集計に時間がかかっています。現場の方からは「紙で書いたものをExcelから探すのがめんどくさい」という声を聞きました。
あるある2:同じ食材が、冷蔵庫・倉庫・棚に分かれている
同じ調味料が、調理場の棚に使いかけが1本、倉庫に箱で数本、冷蔵庫に開封後の分が1本、という置き方はよくあります。紙の棚卸リストは品目ごとに1行なので、置き場所を回りながらその場で足し算して書くことになります。
「同じ商品が保管場所ごとにあったりしたら、その場で集計しながらやっていてかなり手間」というのが、現場で聞いた声です。足し算の途中で数がわからなくなると、もう一度数え直しになります。
あるある3:品目名や規格がわからず、慣れた人しかできない
似たパッケージの調味料、規格違いの缶詰、袋に移し替えた冷凍品。目の前のものが棚卸リストのどの行なのかは、慣れていないとわかりません。結果として、月末の棚卸はいつも同じ人が残ってやることになります。パートの入れ替わりがある厨房ほど、「あの人がいないと棚卸が回らない」状態になりがちです。
あるある4:品目を増やすと、月末の自分がしんどくなる
新しい調味料や食材を試したくても、品目が増えるほど棚卸リストの行が増え、月末の転記も増えます。現場の方からは「取り扱い材料を増やすと月末の自分がしんどくなる」という声もありました。棚卸の手間が、献立の幅を狭める方向に効いてしまっています。
賞味期限のあるある
給食の在庫は日持ちするものが中心なので、期限まわりにもあるあるがあります。
あるある5:期限は容器にしか書いていない
数は棚卸リストに書いても、賞味期限はどこにも控えていない、という厨房は少なくありません。期限を知りたければ、容器を手に取ってラベルを見るしかありません。
献立を考えるときに「あの調味料、いつまでだっけ?」と気になると、事務所から棚まで確かめに行くことになります。献立づくりが事務所の机だけで済まないのは、このためです。
あるある6:在庫はあったのに、気づいたら期限が切れていた
棚の奥に残っていた調味料や冷凍品が、使う日になって切れているとわかる。ある給食の厨房では、期限切れのいちばんの理由はこの「気づいたら切れていた」だと聞きました。
公表された例もあります。埼玉県は2025年6月、県立特別支援学校の学校給食で、賞味期限が切れた白こしょうを2024年11月13日から2025年5月9日まで使っていたと発表しました。委託業者と学校が食品庫を整理していたときに、期限切れの未開封の1缶が見つかり、同じ日に冷蔵庫で使っていた1缶も切れていたとわかった、という経緯です。原因は「学校給食調理業務委託業者及び学校による確認不足」とされ、県は給食を実施する全県立学校に在庫食材の賞味期限の緊急点検を指示しています(健康被害の報告はなし)。
調味料のように少しずつ使う食材は、毎日手に取っていても、ラベルの日付までは見ないことがあります。
あるあるが起きる3つの原因
あるあるを並べると、原因は次の3つにまとまります。
| 原因 | 起きているあるある |
|---|---|
| 在庫の数は紙に、期限は容器のラベルにしかない。事務所からは見えない | 1:Excelへの転記/5:献立のたびに棚を見に行く |
| 本業は調理で、入荷のたびに期限を台帳につける時間がない | 6:気づいたら期限が切れていた |
| 置き場所が分かれ、規格も似ていて、慣れた人しかわからない | 2:その場で足し算/3:いつも同じ人が残る |
どれも、担当者の注意が足りないから起きているわけではありません。紙とExcelで回す以上、毎月くり返される仕組みの問題です。
期限切れが見つかったときに起きること
給食の期限切れは、捨てる金額そのものより、そのあとの手間のほうが重いと聞きます。
- 当日の段取りの組み直し:使う予定だった食材が使えないので、代わりの食材を用意して調理の指示を出し直す
- 施設への連絡:献立を事前に公表している社員食堂・病院・学校では、献立の変更を施設側に連絡し、調整する
- 巡回・監査で見つかった場合の対応:施設の巡回や監査で期限切れの在庫が見つかると、始末書などの対応が必要になることがある
委託で厨房を預かる側にとっては、「期限管理ができている」と施設やお客様に示せることも大切です。いつ、誰が、どの食材の期限を確かめたかを説明できる状態にしておきたい、という声も聞きます。
月末の棚卸をラクにする進め方
正論を言えば、入荷のたびに数と期限を台帳につけ、払い出しのたびに記録すれば、棚卸の前から在庫も期限もわかります。
ただ、調理で手がいっぱいの厨房で、毎日それを続けるのは簡単ではありません。ここでは、今のやり方を大きく変えずにできることを並べます。
1. 回る順番を、置き場所で固定する
「常温の食品庫 → 調理場の棚 → 冷蔵庫 → 冷凍庫」のように、回る順番を決めておきます。冷凍庫を最後にすると、冷凍庫の中で迷う時間が短くなります。温度帯ごとの段取りは食品工場の棚卸でも整理しています。
2. その場で足し算しない。置き場所ごとに書いて、あとで合計する
同じ食材が複数の場所にあっても、現場では置き場所ごとに数を書くだけにします。合計は事務所でまとめて出します。現場で足し算しないだけで、数え直しが減りやすくなります。
3. 使いかけ・移し替えたものの数え方を決めておく
使いかけのボトルを「1本」と数えるのか「0.5本」と数えるのか、袋に移した冷凍品を「袋」で数えるのか「個」で数えるのか。決まっていないと、数える人によって数字が変わります。単位の決め方は棚卸の数え方のコツにまとめています。
4. 期限は、品目ごとに「いちばん近い期限」だけ控える
棚にあるもの全部の期限を書こうとすると、棚卸が終わりません。品目ごとに、いちばん近い期限を1つだけ控えておき、その期限の分を使い切ったら次に近い期限に書き換えていきます。これだけでも、事務所の机で「近いもの」を確かめられるようになります。期限の考え方は賞味期限管理と先入れ先出しとFEFOでも解説しています。
5. いちばん長い「転記」を、なくせないか考える
給食の棚卸で時間がかかっているのは、数えることより、紙の数をExcelに写して集計するところです。最初からデータで記録できれば、この時間はそのまま減らせます。差異が出たときの切り分けは棚卸が合わない原因で整理しています。
給食の厨房で、撮って数えるだけの棚卸
弊社が提供しているラクだなは、スマホで撮って数を入れるだけで棚卸ができるアプリです。

現場は、置き場所ごとに現物を撮って数を入れるだけ。品目名がわからなくても手は止まりません。事務所はその写真を見て、AIが並べた候補から商品を選びます。選び終わると、棚卸表と金額が自動で仕上がるので、紙からExcelへの転記はなくなります。
大手給食会社が運営する施設の厨房では、紙で190分かかっていた棚卸が、ラクだなで70分になりました(2026年9月・1回の実測)。とくに事務所の作業が90分から30分に減っています。
- 棚卸リストの作成・印刷も、バーコードの貼り付けもいらない
- 1人1台のスマホで手分けして撮れる
- 冷凍庫など電波が届かない場所でも、撮影と数量入力ができる(事前に電波の良い場所で撮影一覧画面を開いておく必要があります)
- 賞味期限チェック:期限が近い商品だけが一覧に並び、棚卸で撮った写真を見ながら「まだある/もう無い」を現場で確かめられる
機能の詳細はラクだなの機能、実際の画面は使い方でご覧いただけます。
まとめ
- 給食の厨房は生鮮を当日使い切るので、月末に残るのは調味料・乾物・缶詰・冷凍品が中心
- 棚卸のあるあるは「Excelへの転記」「置き場所が分かれてその場で足し算」「いつも同じ人が残る」「品目を増やすと月末がしんどい」
- 期限のあるあるは「期限は容器にしか書いていない」「気づいたら切れていた」
- 原因は、在庫と期限が紙と現物にしかないこと、記録する時間がないこと、慣れた人しかわからないこと
- 回る順番の固定、置き場所ごとに書いてあとで合計、使いかけの数え方の統一、いちばん近い期限だけ控える、から始められる
よくある質問
- Q. 給食の厨房では、何を棚卸するのですか?
- A. 主に調味料・乾物・缶詰などの常温品と、冷凍品です。厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルでは、常温保存できるものを除き、生鮮食品は1回で使い切る量を調理当日に仕入れるよう求めています。そのため月末に在庫として残り、数える対象になるのは、日持ちのする食材が中心になります。
- Q. 給食の棚卸に時間がかかるのはなぜですか?
- A. 数える時間より、紙に書いた数を事務所でExcelに写し直し、集計する時間が長いことが多いためです。ある給食の厨房では、1回の棚卸190分のうち、事務所での転記と集計に90分かかっていました。同じ食材が冷蔵庫・倉庫・棚に分かれていて、その場で足し算しながら数えることも時間を延ばします。
- Q. 棚卸のときに、賞味期限も全部記録したほうがいいですか?
- A. 全部記録しようとすると棚卸が終わりません。品目ごとに、いちばん近い期限だけを控えておくのが現実的です。その期限の分を使い切ったら、次に近い期限に書き換えていけば、期限が近い食材を事務所の机で確かめられるようになります。
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