棚卸の数え方のコツ|数え漏れ・二重カウント・単位違いを防ぐ8つの決めごと
「数えるだけなのに、なぜ毎回合わないのか」。棚卸の差異の原因には、締めの時点のずれや入出庫の記録漏れと並んで、当日の数え間違いがあります。
数え方のコツというと「2人1組で数える」「数えた棚に印をつける」がよく挙がります。ただ、それだけでは防ぎにくい数え間違いがあります。ケースとバラが混ざった棚、段積みで下が見えないパレット、重さで扱う品目、手袋が外せない冷凍庫。食品を扱う倉庫や工場には、こうした数えにくい在庫が多くあります。
数え方のコツとしてよく挙がる「2人1組で数える」「全部を数え直す」は、正しいやり方です。ただ、棚卸の日に人を集めるだけで精一杯の現場では、そのとおりには続きません。
この記事では、数え間違いを4種類に分けたうえで、それぞれを防ぐ8つのコツを、人を増やさず、紙のままでも始められる順に整理します。全部をやる必要はありません。
この記事でわかること
- 棚卸の数え間違いの4種類
- 数える順番、単位、目印の決め方
- 段積み・重さで扱う品目・冷凍庫の数え方
- 人手が足りない現場で、どれから始めるか
- 数え直しのやり方
数え間違いは4種類に分かれる
棚卸の当日に起きる数え間違いは、次の4種類です。種類ごとに、効くコツが違います。
| 種類 | 何が起きるか | 効くコツ |
|---|---|---|
| 数え漏れ | 棚の一段、パレットの奥、別の場所に置いた分を数えていない | 順番を固定する(コツ1)・迷ったら記録する(コツ8) |
| 二重カウント | 同じ在庫を2人が、または同じ人が2回数えた | 数えた印を残す(コツ6) |
| 単位違い | ケースとバラ、箱とパック、kgと個を取り違えた | 荷姿で書き分ける(コツ2)・重さの決めごと(コツ5) |
| 書き間違い・計算違い | 数字の読み違い、暗算の間違い | 荷姿で書き分ける(コツ2)・掛け算で数える(コツ3) |
数え間違い以外の原因(締めの時点のずれ、入出庫の記録漏れなど)も含めた差異の切り分け方は、棚卸が合わない原因で整理しています。
全部やらなくていい。人手が足りないなら、この順で始める
8つのコツは、手間のかかり方がそれぞれ違います。人も時間も足りない現場では、上から順に始めてください。
| 始める順 | コツ | 手間 |
|---|---|---|
| まず | コツ1 順番を固定する/コツ2 ケース・ボール・バラを分けて書く | 当日の朝に伝えるだけ。人も道具も増えない |
| 次に | コツ3 掛け算で数える/コツ6 数えた印/コツ8 迷ったら「要確認」 | 付箋とペンがあればできる |
| 余裕があれば | コツ4 期限と状態を分ける/コツ5 はかりと風袋/コツ7 冷凍庫の段取り | 棚卸表の欄や、事前の準備が必要 |
「2人1組」は数える人を倍に、「全部を数え直す」は時間を倍にしないとできません。この表に入れていないのはそのためです。数え直しは、最後に絞り方を書いています。
コツ1:数える順番を固定する
数える順番は、人に任せずに決めておきます。
棚の最上段の左端から右へ数え、1段下りてまた左から右へ。最後は最下段の右端で終わる。
順番を人に任せると、数え始める場所も回り方も人によって変わります。目の高さの段から始めて上と下に散らばると、最上段や最下段のどこかが抜けやすくなります。
区画の中では、棚番の順に回ります。棚卸表の並びも同じ順番にそろえておくと、表と棚を見比べながら進められ、飛ばした棚にすぐ気づけます。
順番を決めても漏れやすいのが、次の場所です。
| 場所 | 漏れる理由 | 決めておくこと |
|---|---|---|
| パレットの奥・段積みの下 | 手前から見えない | 奥と下を見てから、その面を数え終わったことにする |
| 通路や床に仮置きした物 | 棚番がない | 区画の担当に含める。誰の担当でもない場所をつくらない |
| 入荷したばかりで棚に入れていない物 | 置き場所が決まっていない | 棚卸の前日までに所定の場所へ入れるか、仮置きの場所を区画として決める |
コツ2:ケース・ボール・バラを分けて書く
食品の在庫は、同じ品目でも荷姿が何段階かに分かれます。外箱のケース、その中のボール(中箱)、さらにその中のバラ(1個ずつ)です。
| 荷姿 | 例(醤油1Lの場合) |
|---|---|
| ケース | 1ケース=4ボール(入数は説明のための例) |
| ボール | 1ボール=3本 |
| バラ | 1本 |
この品目の棚に「3ケースと、開いたケースにボールが5つ、端数のバラが7本」あったとします。現場で合計を出すと、3×4×3+5×3+7=58本です。この計算を、冷えた倉庫で立ったまま暗算すると、間違いが入りやすくなります。
現場では、荷姿ごとの欄に、見たとおりの数だけを書きます。 換算は事務所で、入数をもとにまとめて行います。
| 品目 | ケース | ボール | バラ |
|---|---|---|---|
| 醤油1L | 3 | 5 | 7 |
こう書いておけば、合計が合わなかったときにも、どの荷姿で数え間違えたのかを追えます。入数は棚卸表にあらかじめ印刷しておき、現場で調べなくて済むようにします。
荷姿まわりで、もう2つ決めておきます。
- 開封済みの箱は、外箱の表示ではなく中身を数える。 外箱に「24入」とあっても、開いていれば24とは限りません
- 封がされたままの箱は、入数で数えてよい。 その代わり、本当に未開封かを確かめてから入数で書く
コツ3:段積みとパレットは掛け算で数える
パレットに段積みされた在庫は、1箱ずつ数える代わりに、「1段の箱数×段数」で数える方法があります。数える回数が減るぶん、数え間違いが入る機会も減ります。
- 上から見て、1段に何箱並んでいるかを数える(例:横4×奥3=12箱)
- 横から見て、何段あるかを数える(例:5段)
- 掛け算で合計を出す(12×5=60箱)
- 最上段だけ欠けている場合は、最上段を別に数えて足す(例:12×4+8=56箱)
掛け算で数えるときに気をつけるのは、全部の段が同じ並びになっているかです。下の段だけ箱の向きが違う、途中の段が抜かれている、といったことがあります。1段の箱数を数えたら、横の面からも数えて、同じになるかを確かめます。
計算式のまま記録に残しておくと、あとで見直したときに、どう数えたのかがわかります。
コツ4:期限と状態の違うものは、分けて数える
同じ品目でも、次のものは分けて数えて、別の欄に書きます。
- 期限切れ、期限が近いもの
- 破損、汚れ、へこみのあるもの
- 返品待ち、出荷保留のもの
- 預かり在庫など、自社の在庫ではないもの
一緒に数えてしまうと、あとから分けられません。とくに、自社の在庫ではない預かり在庫を一緒に数えると、その分だけ帳簿より多く数えたことになり、差異の原因がわからなくなります。
食品では、同じ品目で期限の違うものが同じ棚に並ぶことがあります。ただし、棚卸のときに全部の期限を書き取ろうとすると終わりません。棚卸では「期限切れ・期限が近いものを分けて数える」までにとどめ、期限の管理は別に回すのが現実的です。期限の追い方は賞味期限管理とはで整理しています。
コツ5:重さで数える品目は、はかりと風袋を決めておく
精肉や鮮魚の切り身のように、1つずつ重さが違う品目は、個数ではなく重さで数えることがあります。単価がkgで決まっている品目は重さで、1個・1パックで決まっている品目は個数で、と単価の単位に合わせて決めます(詳しくは不定貫とは)。
重さで数える品目では、次の3つを先に決めておきます。全部を一度に決めるのが難しければ、まずは風袋の扱いだけでもそろえます。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 使うはかり | 毎回同じはかりを使う。置き場所を決めておく |
| 風袋の引き方 | 箱・トレー・氷の重さを引くか。引く場合、何gを引くか |
| 記録する単位と桁 | kgで小数点以下2桁まで、など |
風袋(中身以外の箱や容器の重さ)の扱いが人によって違うと、同じ在庫でも数字が変わります。箱ごと量る品目は、空箱の重さを品目ごとに棚卸表に書いておくと、現場で迷いません。
コツ6:数えた印と、数えた人を残す
数え終わった棚や箱に、付箋やシールで印をつけます。二重カウントと数え漏れの両方に効き、道具もいらない方法です。
印には、数えた人と時刻も書きます。あとで差異が出たときに、誰に確かめればいいかがすぐわかります。印をはがすのは、棚卸が確定してからにします。
コツ7:冷凍庫・冷蔵庫では、数えることだけをする
冷凍庫や冷蔵庫では、長くいるほど手がかじかみ、書くことも数えることも難しくなります。庫内でやることは、数えて記録することだけに絞ります。
- 「これは何の商品か」「これは数える対象か」の判断は、庫内でしない。わからない物は、その場では数量だけ書いて、外で確かめる
- 奥から手前へ、上から下へと順番を決め、扉を開ける回数を減らす
- 時間で区切って、交代する。常温の場所で記録のルールに慣れてから入る
- 手袋をしたまま書ける・入力できる記録の手段を用意する
温度帯ごとの段取りは、食品工場の棚卸で詳しくまとめています。
コツ8:迷ったら、数えて「要確認」と書く
棚卸表にない商品、名前のわからない商品、数える対象かどうかわからない物が出てきたら、その場で判断せず、数えて記録し、「要確認」と書いて先に進みます。
迷って手が止まると、どこまで数えたかがわからなくなり、数え漏れにつながります。記録さえ残っていれば、あとで責任者が判断できます。数えずに飛ばした物は、あとから数えに戻るしかありません。
数え直しは、絞って別の人がやる
全部を2回数えると、時間が倍になります。数え直しは、次の品目に絞ります。
- 帳簿と照らして、差が大きい品目
- 金額の大きい品目
- 前回の棚卸でも合わなかった品目
数え直すのは、できれば最初に数えた人とは別の人にします。同じ人が数え直すと、同じ見落としを繰り返すおそれがあります。別の人を用意できないときは、時間を置いて、最初と違う順番で数え直します。また、数え直す人に帳簿の数量を見せずに数えてもらうと、「帳簿の数に合わせて数える」ことを防げます。
数字の書き方もそろえておきます。手書きの「1」と「7」、「4」と「9」は読み違えやすいので、書き方の見本を棚卸表の上に載せておくと、転記のときの読み違いが減ります。
写真で残すと、数え直しに行かずに確かめられる
紙に数字だけを書く方法では、数えたときの様子をあとから確かめられないので、数え間違いの原因がわからないまま残ることがあります。数えたときに写真を撮っておけば、事務所で写真を見て確かめられ、数え直しのために倉庫へ行く回数が減ります。

弊社が提供しているラクだなは、写真で撮る棚卸アプリです。現場はスマホで商品を撮って数量を入れ、事務所は写真を見ながら、AIが並べた候補から商品を選びます。この記事のコツと関係するのは、次の点です。
- 数量は計算式のまま入力できる。「3×12+5」のように、荷姿ごとの数や段積みの掛け算をそのまま入れられます
- 写真が数量と一緒に残る。あとから「この棚はどう数えたか」を写真で見返せます
- 商品の特定を現場でしなくてよい。わからない商品も撮って数量を入れておけば、事務所で商品を選べます。登録のない商品は、登録の権限を持つ人が割り当ての画面からそのまま登録できます
- 電波が届かない場所でも撮影と数量入力ができる。事前に、電波の良い場所で撮影一覧画面を一度開いておく必要があります
鮮魚・冷凍品を扱う豊洲漁商産直市場様からは、「写真がそのまま残るので、あの時この商品は何個あったかをすぐ見返せる。数え直しに行く必要がない」という声をいただいています。機能の一覧はラクだなの機能でご覧いただけます。
まとめ
棚卸の数え方のコツをまとめます。
- 数え間違いは、数え漏れ・二重カウント・単位違い・書き間違いの4種類
- 全部やる必要はない。人手が足りないなら、順番の固定と荷姿の書き分けから始める
- 順番は「最上段の左から右へ、1段ずつ下へ」で固定し、棚卸表も同じ並びにする
- ケース・ボール・バラは欄を分けて見たとおりに書き、換算は事務所で行う
- 段積みは「1段の箱数×段数」で数え、横の面からも確かめる
- 期限切れ・破損・預かり在庫は分けて数える
- 重さで数える品目は、はかり・風袋・単位を先に決める
- 冷凍庫では数えて記録するだけにし、判断は外で行う
- 迷った物は数えて「要確認」と書き、数え直しは絞って別の人がやる
まずは次の棚卸の前に、数える順番と、ケース・ボール・バラの書き分けだけでも全員にそろえてみてください。この2つは、数え漏れと単位違いに直接効きます。
棚卸全体の段取りは棚卸のやり方、作業時間を短くする方法は棚卸を効率化する方法でまとめています。
※本記事の内容は2026年10月時点のものです。
よくある質問
- Q. 棚卸はどこから数え始めればいいですか?
- A. 棚の最上段の左端から右へ数え、1段下りてまた左から右へ、と順番を固定します。何も決めないと、目の高さの2段目・3段目から数え始めて、最上段と最下段を忘れやすくなります。区画の中では棚番の順に回り、棚卸表の並びも同じ順番にそろえておくと、表と棚を見比べながら進められます。
- Q. ケースとバラが混ざっている商品は、どう書けばいいですか?
- A. ケース・ボール(中箱)・バラの欄を分けて、見たとおりの数を書きます。現場で合計の個数に換算しないことが大事です。たとえば「3ケース・5ボール・7バラ」と書いておけば、入数をもとに事務所で正しく換算できます。現場で暗算して合計だけを書くと、間違えたときにどこで間違えたのか追えません。
- Q. 未開封の段ボールは、開けて中身を数える必要がありますか?
- A. 封がされたままで、外箱の入数が信頼できるなら、入数で数えてかまいません。開封済みの箱は、外箱の表示ではなく中身を数えます。箱が開いているかどうかを確かめずに外箱の表示をそのまま書くのが、数え間違いの典型です。
- Q. 数え直しは全部の品目でやるべきですか?
- A. 全部を数え直すと時間が倍になります。帳簿と照らして差が大きい品目、金額の大きい品目、前回も合わなかった品目に絞って、最初に数えた人とは別の人が数え直すのが現実的です。
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