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棚卸のやり方|1か月前から翌日までの手順と段取り

#棚卸

「初めて棚卸の担当になったが、何から始めればいいかわからない」「毎回、当日になってから慌てている」。棚卸のやり方は、会社ごとに受け継がれていることが多く、手順として書き出されていないことがよくあります。

棚卸は、当日に数える作業だけではありません。1か月前の計画から、翌日の集計と数え直しまでが一続きの作業です。どの時点で何を決めておくかがわかると、当日の混乱はほとんどなくなります。

この記事では、棚卸(実地棚卸)のやり方を、1か月前・1週間前・前日・当日・翌日の5つの時点に分けてまとめます。

この記事でわかること

  • 棚卸の全体の流れ(計画から確定まで)
  • 1か月前・1週間前・前日に決めておくこと
  • 当日の数え方(リスト方式・タグ方式・2人1組)
  • 数えている最中の入出庫の扱い
  • 翌日の集計・差異の確認・数え直しと、棚卸表の保存

棚卸の全体の流れ

棚卸は、在庫の数量と金額を確定させる作業です。何のためにやるのかは棚卸とはで詳しくまとめているので、ここでは手順に絞ります。

この記事で扱うのは、現物を数える実地棚卸です。法人税の取り扱いでは、事業年度の終了時に実地棚卸を行うのが原則とされています(国税庁「法人税基本通達 5-4-1」)。

全体の流れを時点で分けると、次のようになります。

時点やること
1か月前日程・範囲・方式・責任者を決める
1週間前保管場所の整理、担当の割り振り、棚卸表と道具の準備
前日伝票の締め、数える単位とルールの最終確認
当日数えて記録する。数えている最中の入出庫を記録する
翌日集計、帳簿との照合、差異の確認、数え直し、確定

多くの会社で、つまずくのは「前日」と「翌日」です。前日に締めができていないと差異の原因がわからなくなり、翌日の段取りがないと集計が特定の人に集中して、確定が何日も遅れます。

1か月前:日程・範囲・方式を決める

1か月前には、棚卸の骨組みを決めます。

日程と時間

決算期末に合わせるのが基本です。そのうえで、入出庫が少ない曜日・時間帯を選びます。開始時刻と終了予定時刻も決め、関係する部署や取引先に、入出荷を止める・減らす時間を伝えておきます。

範囲

どこにある、誰の在庫を数えるかを決めます。

  • 数える場所(倉庫・工場・店舗・冷蔵庫・冷凍庫・仮置き場)
  • 数える在庫の種類(商品・製品・原材料・仕掛品・資材)
  • 外部の倉庫や取引先に預けている自社の在庫(預け先に残高を確かめる)
  • 取引先から預かっている在庫(数える対象から外す)

預かり在庫を自社の在庫として数えたり、預け在庫を数え忘れたりするのは、棚卸が合わない原因の一つです。範囲はこの時点で書き出しておきます。

方式

記録のしかたを決めます。代表的なのはリスト方式とタグ方式です。

リスト方式タグ方式
やり方品目が印刷された一覧に、数えた数を書き込む数えた在庫に番号付きの札(タグ)を貼り、札に数を書く。あとで札を回収して集計する
準備帳簿から最新の品目リストを出し直し、保管場所ごとに分けて印刷する番号付きのタグを用意する
強み品目が印刷されているので、当日は数を書き込むだけで済む数え漏れと二重に数えることを防ぎやすい。リストにない在庫も拾える
弱み新しい品目や廃番を反映した最新リストを作るのが手間。リストにない在庫を見落としやすい。集めた紙をエクセルに転記して集計する手間が大きいタグの管理と回収に手間がかかる。札の数をエクセルに転記して集計する手間も大きい
向いている現場品目が決まっていて、帳簿が整っている品目が多い。帳簿にない在庫も多い

どちらを選んでも、「リストにない在庫が出てきたら、その場で判断せず全部記録する」とルールにしておくと、当日の迷いが減ります。

責任者

棚卸全体の責任者を1人決めます。当日の判断(範囲の変更・数え直しの指示)と、翌日の確定を行う人です。

1週間前:整理・担当・道具をそろえる

保管場所を整理する

不要品や廃棄予定品を先に片づけ、同じ商品を1か所にまとめます。棚や区画に名前(棚番)をつけ、見取り図を1枚つくっておくと、担当の割り振りと数え漏れの確認に使えます。

担当を割り振る

見取り図の区画ごとに、担当を決めます。上位の記事では「責任分担する」「2人1組で」までしか書かれていないことが多いですが、実際には次の3つを見て割り振ります。

  • 区画ごとの品目数と所要時間 … 品目が多い区画、数えにくい区画には人を厚くする
  • 慣れた人と慣れない人の組み合わせ … 商品を知っている人を各組に1人入れる
  • 厳しい場所の交代 … 冷凍庫など長くいられない場所は、時間で交代する組を決める

紙で記録する場合、「1人が数えて、1人が書く」2人1組が基本です。数える人と書く人を途中で交代し、もう一度確かめる形にすると、数え間違いが減ります。

棚卸表と道具を用意する

  • 棚卸表(リスト)またはタグ。リストは前回のものを使い回さず、帳簿から最新の品目で出し直す
  • 筆記用具、クリップボード、電卓
  • 数え終わった場所に貼る目印(付箋・シール)
  • 冷凍庫用の防寒具と手袋
  • 見取り図と担当表

棚卸表に入れる項目は、棚卸表テンプレートで詳しくまとめています。

前日:締めと数え方を確かめる

前日にやることは2つです。ここを飛ばすと、翌日の集計で差異の原因がわからなくなります。

伝票を締める

棚卸で数えた数は、「いつの時点の在庫か」が決まっていないと帳簿と比べられません。基準の時点(例:前日の出荷終了時)を決め、その時点までの入荷・出荷の伝票をすべて処理しておきます。

  • 出荷したのに処理していない伝票はないか
  • 入荷して棚にあるのに、計上していない品物はないか
  • 届く前に在庫として計上している伝票(先日付)はないか

数える単位とルールを確かめる

担当者全員に、数え方のルールを伝えます。とくにゆれやすいのが数える単位です。

決めること例
ケースかバラかケースで数え、端数のバラは別に書く。入数は棚卸表に印刷しておく
開封済みの箱中身を数えてバラで書く
重さで扱う商品量って重さで書く(単価が重さで決まる商品のみ)
期限切れ・破損品数量は数えたうえで、別の欄に分けて書く
リストにない商品その場で判断せず、全部記録する

同じ商品を、ある人はケースで、別の人はバラで数えると、集計で必ず合わなくなります。単位の決め方は仕掛品の棚卸、重さで扱う商品は不定貫とはでも詳しく書いています。

当日:数えて記録する

1. 朝に全員でルールを確かめる

開始前に、責任者から範囲・担当・数える単位・迷ったときのルールを全員に伝えます。5分で構いません。ここで確認しておくと、当日の問い合わせが減ります。

2. 区画ごとに数えて記録する

見取り図の区画ごとに、決めた方式で数えて記録します。

  • 棚の左上から右下へなど、数える順番を決めて、飛ばさない
  • 数え終わった棚や箱に目印をつける(数えた人の名前と時刻も書く)
  • 数えにくい物は、無理にその場で片づけず、記録に「要確認」と書いて先に進む

3. 厳しい場所は短く区切る

冷凍庫や冷蔵庫は、長くいるほど手が動かなくなり、数え間違いも増えます。

  • 常温の場所から始め、記録のルールに慣れてから低温の場所へ入る
  • 冷凍庫は時間で区切り、組を交代する
  • 書き取りにくい場所では、数量だけ書いて、商品の確認は外で行う

食品工場での温度帯ごとの段取りは、食品工場の棚卸で詳しくまとめています。

4. 数えている最中の入出庫を記録する

数えている区画の在庫は動かさないのが原則です。どうしても出荷や入荷がある場合は、動いた品目と数を別の用紙に書き出しておきます。翌日の集計のときに、その分を足し引きします。

全体を一度に止めるのが難しい場合は、区画ごとに日をずらして順番に数える循環棚卸も使えます。進め方は棚卸を効率化する方法でまとめています。

5. 終わったら記録を回収する

区画ごとに、記録の漏れ(空欄・読めない字)がないかを確かめてから回収します。見取り図に目印がない区画が残っていないかも、責任者が確かめます。

翌日:集計・照合・確定

翌日の段取りは、上位の記事でもほとんど書かれていませんが、確定が遅れるのはたいていここです。

1. 集計する

回収した記録を、品目ごとに集計します。紙の場合は、エクセルへの転記がここで発生します。

  • 同じ品目が複数の区画にあれば合算する
  • 単位をそろえる(ケース×入数+バラ)
  • 数えている最中に動いた分を足し引きする
  • 単価をかけて金額を出す

2. 帳簿と照合して、差異を確かめる

帳簿の在庫と、数えた在庫を並べて、差異のある品目を洗い出します。差異が出たら、全部を数え直す前に、机の上で確かめられる原因から潰します。

  1. 締めの時点より前の伝票が、処理されずに残っていないか
  2. 単位の取り違え(差異がケースの入数の倍数になっていないか)
  3. 入出庫の記録漏れ

切り分けの手順は、棚卸が合わない原因で詳しくまとめています。

3. 必要な品目だけ数え直す

ここまでで説明がつかず、差異の金額が大きい品目だけを数え直します。数え直した結果と原因は、次回のために記録に残します。

4. 確定して、棚卸表を保存する

責任者が数量と金額を確定し、帳簿を実際の在庫に合わせます。

棚卸表には、在庫の種類・品質・型ごとに、数量・単価・金額を書くことが法令で決められています(法人税法施行規則 第56条)。作った棚卸表は、帳簿書類として原則7年間の保存が必要です(国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」)。数量を書いたメモなどの元の記録も、棚卸表と一緒に保存しておきます。

在庫の単価をどう評価するか(原価法・低価法など)は、税務署に届け出た方法で計算します。評価方法は会計の扱いになるので、顧問税理士にご確認ください。

棚卸のやり方でよくある失敗

失敗起きること防ぎ方
前日に伝票を締めていない翌日の差異の原因がわからない基準時点までの伝票を前日に処理する
数える単位を決めていない集計でケースとバラが混ざる前日に単位のルールを全員に伝える
リストにない商品を現場で判断させた確認の往復と数え漏れが出る「全部記録する」をルールにする
集計を1人に任せた確定が何日も遅れる翌日の担当を複数人で決めておく
差異が出たら全部数え直した棚卸をもう一度やるのと同じになる机の上で確かめてから、必要な品目だけ数え直す

記録を写真に変えると、当日と翌日が軽くなる

ここまでの手順で、手間がかかるのは当日の「書く」と、翌日の「転記・特定・集計」です。紙に書き取れるのは商品名と数量だけなので、翌日に「これは何を数えたのか」を確かめる作業が残ります。

弊社が提供しているラクだなは、現物の写真を撮って数量を入れる棚卸アプリです。当日は、現場の人が撮って数を入れるだけで進められます。翌日は、事務所が写真を見て、AIが並べた候補から商品を選びます。商品を割り当てれば、棚卸表と金額、前回との差異まで出ます。

棚卸アプリ「ラクだな」のスマホの撮影・数量入力画面と、パソコンの商品割当画面

撮影する人・商品を割り当てる人・確定する人で権限を分けられるので、翌日の作業を複数人で分担できます。電波が届かない冷凍庫でも、事前に一度画面を開いておけば記録できます。ラクだなの使い方では、実際の画面で流れをご覧いただけます。

まとめ

棚卸のやり方をまとめます。

  • 棚卸は、1か月前・1週間前・前日・当日・翌日の5つの時点で進める
  • 1か月前に日程・範囲・方式・責任者、1週間前に整理・担当・道具を決める
  • 前日に伝票を締め、数える単位とルールを全員に伝える
  • 当日は区画ごとに数えて目印をつけ、数えている最中の入出庫を記録する
  • 翌日に集計・照合し、机の上で確かめてから必要な品目だけ数え直して確定する

棚卸のやり方は、一度手順に書き出すと、担当者が変わっても同じ質で回せるようになります。まずはこの記事の5つの時点に沿って、自社の棚卸で誰が何をしているかを書き出すところから始めてみてください。

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※本記事の内容は2026年9月時点のものです。

よくある質問

Q. 棚卸はどんな手順で進めればいいですか?
A. 計画 → 準備 → 数えて記録 → 集計 → 帳簿との照合と差異の確認 → 確定、の順です。時点で分けると、1か月前に日程と範囲、1週間前に整理と担当、前日に締めと数え方の確認、当日に数えて記録、翌日に集計と数え直しを行います。
Q. リスト方式とタグ方式はどちらがいいですか?
A. 品目が決まっていて帳簿が整っているならリスト方式、品目が多く帳簿にない在庫も多いならタグ方式が向いています。リスト方式は当日に数を書き込むだけで済み、タグ方式は数え漏れと二重に数えることを防ぎやすいのが特徴です。
Q. 棚卸は何人で行えばいいですか?
A. 紙で記録する場合は、数える人と書く人の2人1組が基本です。区画の数と、1区画を数えるのにかかる時間から人数を決めます。片手で記録できる手段を使えば、1人1区画で進めることもできます。
Q. 棚卸のあいだ、入荷や出荷は止めないといけませんか?
A. 数えている区画の在庫は動かさないのが原則です。全体を止められない場合は、基準の時点を決め、それ以降に動いた分を別に記録して、集計のときに差し引きます。
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