食品の在庫管理をエクセルでやる限界|賞味期限とロットの表が、現場で続かない理由
食品の在庫管理をエクセルでやる方法を調べると、多くの記事が同じ流れで書いています。商品マスタ・入出庫・在庫の3つのシートを作り、入荷のたびに賞味期限とロットを記録し、出荷のたびにどのロットを出したかを記録する。そうすれば、期限が迫った在庫も、どのロットがどこへ出たかもわかる、と。
それは正しいやり方です。ただ、食品卸や食品工場の現場で、紙やエクセルのままになっている理由は、やり方を知らないことではなく、その記録を毎日続けることが、今の人数と作業の流れではむずかしいことにある場合が少なくありません。
この記事では、まず「正しいやり方」としての表の組み方を示し、そのあとで、なぜ現場では続きにくいのかを1つずつ見ていきます。最後に、紙やエクセルのままでもできることを整理します。
この記事でわかること
- 食品の在庫管理で、エクセルに持たせたい情報
- ロットと賞味期限を持つ表の組み方と関数
- その表が、現場で続きにくい5つの理由
- 紙やエクセルのままでもできること
食品の在庫管理で、エクセルに持たせたい情報
品目と数量だけを管理する在庫表と、食品の在庫表とでは、持たせたい情報が違います。
| 情報 | 一般的な在庫表 | 食品の在庫表 |
|---|---|---|
| 品目・数量 | 必要 | 必要 |
| 入荷日 | あれば便利 | ロットを見分けるのに必要 |
| 賞味期限・消費期限 | 不要 | 必要 |
| 仕入先 | あれば便利 | どこから仕入れたかをたどるのに必要 |
| 製造日 | 不要 | 小売向けに出すなら、納品期限を出すのに必要 |
| 数える単位 | 個・ケース | 個・ケースに加えて、kgで数える品目がある |
期限の違う在庫を見分けるために、入荷した単位で「ロット」として分けて記録します。
食品衛生法でも、食品を製造・販売・貯蔵する事業者に対して、仕入先などの記録の作成と保存を求めています(努力義務)。
食品等事業者は、販売食品等に起因する食品衛生上の危害の発生の防止に必要な限度において、当該食品等事業者に対して販売食品等又はその原材料の販売を行つた者の名称その他必要な情報に関する記録を作成し、これを保存するよう努めなければならない。
── 食品衛生法 第3条第2項
正しいやり方:ロットと賞味期限を持つ表の組み方
まず、多くの記事が紹介している「正しいやり方」を、食品向けに具体的に組んでみます。次の3つのシートに分けます。
| シート | 1行に入れるもの | 主な列 |
|---|---|---|
| 商品マスタ | 1品目 | 品目コード・品目名・仕入先・単位・賞味期間 |
| 入出庫履歴 | 1回の入庫・出庫・廃棄 | 日付・区分(入庫/出庫/廃棄)・品目コード・ロット番号・賞味期限・数量 |
| ロット別在庫 | 1ロット | 品目コード・ロット番号・入荷日・賞味期限・在庫数・残り日数 |
ロット番号は、品目コードと入荷日をつないで作ると重なりません(例:品目コード「A001」、入荷日2026年10月3日なら「A001-20261003」)。入出庫履歴では、出庫と廃棄の行にも、どのロットから出したかを書きます。
ロット別の在庫数は、入出庫履歴から、ロットごとに入庫の合計を足し、出庫と廃棄の合計を引いて出します。入出庫履歴のB列が区分、D列がロット番号、F列が数量、ロット別在庫のB列がロット番号なら、次の式になります。
=SUMIFS(入出庫履歴!F:F,入出庫履歴!D:D,B2,入出庫履歴!B:B,"入庫")
-SUMIFS(入出庫履歴!F:F,入出庫履歴!D:D,B2,入出庫履歴!B:B,"出庫")
-SUMIFS(入出庫履歴!F:F,入出庫履歴!D:D,B2,入出庫履歴!B:B,"廃棄")
残り日数は、賞味期限がD列にあれば「=D2-TODAY()」で出せます。この列に条件付き書式を設定し、たとえば30日以下を黄色、0以下を赤にします。
小売向けに出す在庫は、賞味期限より先に取引先の納品期限が来ます。3分の1ルールなら、製造日(C列)と賞味期限(D列)から、納品期限の日付を次の式で出せます。
=C2+ROUNDDOWN((D2-C2)/3,0)
納品期限の考え方は、3分の1ルールとはで詳しく整理しています。
ここまでが「正しいやり方」です。表を作ること自体は、むずかしくありません。
その表が、現場で続きにくい5つの理由
表は作れても、毎日の記録が続きにくいのが食品の在庫です。正しいやり方と、現場の事情を並べると次のようになります。
| 正しいやり方 | 現場で続きにくい理由 | |
|---|---|---|
| 1 | 入荷のたびに、期限とロットを記録する | 入荷が重なる時間に、期限を1品ずつ書き写す手が足りない |
| 2 | 出荷のたびに、どのロットを出したかを記録する | 出荷の作業中に、ロットを見て書く余裕がない |
| 3 | 現場の数量を、その日のうちにエクセルに入れる | 冷凍庫や倉庫の奥にパソコンはない |
| 4 | 期限を、決まった形式で入力する | 期限の表示が商品ごとにばらばら |
| 5 | 棚卸で、ロットごとに数を合わせる | 棚卸の日に、ロットごとに数える時間はとりにくい |
1. 入荷のときに、期限を書き写す手が足りない
期限の情報が生まれるのは入荷のときなので、そこで記録するのが正しいやり方です。
ただ、入荷は決まった時間に重なりがちです。検品して、数を確かめて、棚に入れる。その最中に、1品ずつ外箱の期限を読み取って書き写すと、そのぶん入荷の作業が延びます。「入荷時にラベルを貼れば」というやり方もありますが、貼る作業も同じように入荷の時間に上乗せされます。
人を増やせない現場では、期限は書かずに棚に入れ、あとで手が空いたときに棚を回って調べる、という形に落ち着きやすくなります。
2. 出荷のときに、どのロットを出したかを書けない
ロット別の在庫を正しく出すには、出荷のたびに「どのロットから出したか」を記録する必要があります。
ところが、出荷の作業は時間に追われます。ピッキングの最中に箱の期限を見比べて、ロット番号を伝票に書き添えるのは手間がかかり、抜けやすい作業です。取りやすい手前のものから出して、記録には書かない。そうすると、台帳の上では古いロットが減っているのに、棚には古いロットが残っている、というずれがたまっていきます。
期限の早いものから出すための置き方(期限の早いものを手前に置く、など)は、FEFOとはで整理しています。
3. 冷凍庫や倉庫の奥に、パソコンはない
エクセルは事務所のパソコンで開くものです。冷凍庫や倉庫の奥で、手袋をしたまま入力することはできません。現場では紙にメモをして、事務所に戻ってから入力し直すことになります。
書き写す回数が1回増えるごとに、間違いが入る機会も増えます。手書きの期限の数字は読み違えやすく、入力が翌日にずれ込めば、その間の在庫表は古いままです。
4. 期限の表示が、商品ごとにばらばら
賞味期限の表示は、商品によって「年月日」のものと「年月」だけのものがあります。消費者庁の加工食品の表示に関する共通Q&Aでは、製造日から賞味期限までが3か月を超える食品は、年月で表示することが認められています。
入力する人によって「2027/3」「2027/3/31」「R9.3」と書き方が変わると、並べ替えも残り日数の計算も正しく動きません。入力のルールを決めても、忙しい時間に入力する人が毎回そのとおりに入れられるとは限りません。
5. 棚卸の日に、ロットごとに数える時間はとりにくい
台帳のずれを正すのが棚卸ですが、棚卸は品目ごとに数えることが多く、ロットごとに分けて数えると、そのぶん時間が延びます。
品目の合計で台帳と合わなかったとき、エクセルの台帳からは、どのロットの記録が抜けたのかがわかりません。品目の合計に合わせてどこかのロットの数量を手で直すと、ロット別の在庫は少しずつ実物から離れていきます。
5つとも、やり方を知らないから起きるのではありません。正しいやり方が、今の人数と作業の流れに収まりにくいから起きます。エクセルの表を作ったものの更新が止まり、紙の運用が残る、という形になるのはそのためです。
紙やエクセルのままでも、できること
正しいやり方を全部こなせなくても、記録の量を減らせば続けやすくなります。
| やめること | 代わりにすること |
|---|---|
| 全部のロットの期限を追う | 品目ごとに「いま棚にある中で最も早い期限」1つだけを書く |
| 出荷のたびにロットを書く | 期限の早いものを手前に置き、置き方で順番を守る |
| 入荷のたびに期限を書き写す | 期限の見える向きで棚に入れ、週1回、最も早い期限だけを確かめる |
| 期限切れを毎日探す | 期限切れで捨てた物の品目・数量・金額だけを記録し、多い品目から見直す |
こうすると、記録する量は品目数と同じになります。品目ごとに最も早い期限だけを追う考え方は、賞味期限管理とはで詳しく説明しています。
それでも、次のようなことが起きているなら、紙とエクセルで記録する方法そのものを見直す時期です。
- 期限切れの廃棄に気づくのが、出荷の直前か棚卸の日になっている
- 現場のメモを事務所で入力するまでに、1日以上かかる日がある
- 棚卸で品目の合計が合わず、毎回どこかの数量を手で直している
- 表や運用を知っているのが、1人だけになっている
写真で記録すると、作業の流れを変えずに残せる
続きにくい理由の多くは、現場で見た品目・数量・期限を、紙やパソコンに書き写すところにあります。現場で撮った写真をそのまま記録にすれば、書き写す工程がなくなります。

弊社が提供しているラクだなは、写真で撮る棚卸アプリです。棚卸に加えて、入庫・出庫・廃棄を同じ操作で記録できる在庫管理機能(別途のご契約)があります。食品卸のように入出荷が毎日ある現場では、次の点が関係します。
- 現場は、撮って数量を入れるだけ。商品の特定は、事務所で写真を見ながら、AIが並べた候補から選びます。バーコードやラベルを貼る必要はありません
- 入庫の記録から、そのままロットが作られる。入荷日・仕入単価に加えて、賞味期限も入力できます
- 出庫では、入荷日の古いロットが自動で選ばれる。違っていれば、写真・入荷日・賞味期限を見ながら選び直せます
- 電波が届かない場所でも撮影と数量入力ができる。事前に、電波の良い場所で撮影一覧画面を一度開いておく必要があります
機能の一覧はラクだなの機能でご覧いただけます。
まとめ
- 食品の在庫表は、品目・数量に加えて、ロット(入荷日)・賞味期限・仕入先を持つのが正しいやり方
- 表は、商品マスタ・入出庫履歴・ロット別在庫の3シートとSUMIFSで組める
- 続きにくいのは、入荷で期限を写す手が足りない・出荷でロットを書けない・冷凍庫にパソコンがない・期限の表示がばらばら・棚卸でロットごとに数えにくい、の5つの理由
- どれも、やり方を知らないからではなく、正しいやり方が今の人数と作業の流れに収まりにくいから起きる
- 紙やエクセルのままなら、品目ごとに最も早い期限1つだけを追い、出荷の順番は置き方で守る
まずは、いまの在庫表で、最後に期限が更新された日を確かめてみてください。その日から今日までの入出荷の分だけ、表と棚の実物がずれている可能性があります。
棚卸表をエクセルで作る方法は、棚卸表テンプレートで無料のテンプレートとあわせてご紹介しています。
※本記事の内容は2026年10月時点のものです。
よくある質問
- Q. 食品の在庫をエクセルで管理するとき、最低限どの列が必要ですか?
- A. 入出庫の記録1行ごとに、日付・入庫か出庫か廃棄か・品目・数量に加えて、ロットを見分けるための入荷日と賞味期限(または消費期限)の列が必要です。仕入先も入れておくと、どこから仕入れた在庫かをたどれます。ただし、列を用意しても、毎回入力できなければ表は実物からずれていきます。
- Q. エクセルで賞味期限が近い在庫に色を付けるには、どうすればいいですか?
- A. 残り日数の列を「=賞味期限のセル-TODAY()」で作り、その列に条件付き書式を設定します。たとえば30日以下を黄色、0以下を赤にします。ただし色が正しく付くのは、期限と在庫数が最新のまま入力されているときだけです。
- Q. エクセルの在庫管理は、何品目くらいまでなら回りますか?
- A. 品目数だけでは決まりません。入荷のたびに期限を入力できているか、出荷のたびにどのロットから出したかを記録できているか、現場の数量がその日のうちに入力されているかで決まります。品目が少なくても、この記録が止まった時点で、表は実物と合わなくなります。
- Q. ロットを全部記録できないなら、どうすればいいですか?
- A. 全部のロットを追わず、品目ごとに「いま棚にある中で最も早い期限」だけを見る方法があります。出荷は期限の早いものを手前に置いて、置き方で順番を守ります。記録の量が品目数と同じになるので、手が足りない現場でも続けやすくなります。
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